NHKアナウンサー内定 A.N

就職活動は悩みの連続だった。「自分は将来何をやりたいのか?」「どんな仕事が本当に向いているのか?」これらの根本的な問題を、内定が決まる4月までずっと抱えていた。
大学2年次にマスコミに興味を持ち、将来は報道記者になりたいと思っていた。難関の記者職を受けるにはその基本である「作文力」を鍛えなければと思い、1月に高田塾の門を叩いた。しかし、いざ作文の練習をしてみると、1時間で800字を書き終えることができない。自分の体験・考えを短時間でまとめ、分かり易く書き表すことがいかに難しいことか。「ああ、俺には文章を書くのは向いていないのかも。」作文を書くたびに落ち込んだ。文章力を磨くはずの高田塾で、自分の文章力のなさを思い知った。


その内、「書くこと」よりは「話すこと」のほうが、自分の表現手段として長けているのではないかと思い始めた。私は中学・高校で生徒会長や部活の部長を経験し、自分の気持ちや考えを「話すこと」によって人に伝える機会が多かった。大学の授業でも人前で話すプレゼンテーションのほうが、自分の気持ちをより訴えることができた。


面接では、志望動機よりも「どんな学生時代を送ってきたのか」「これまで挫折したこと」など、受験者のこれまでの人生を探ろうとする質問が多かった。私の場合、箱根駅伝を目指して大学に進学したにもかかわらず、大学1年次に部活を辞めてしまったことに質問が集中した。豪州留学やカンボジアでのボランティア活動など、アピールポイントにするつもりだった経験については、さほど質問を受けなかった。
マスコミはもちろん一般企業でも、面接では「これまで自分がどういう考えで行動し、どんなことを感じてきたのか」を、自分の言葉で素直に表現することが求められていると感じた。面接は、自分を宣伝する「自己PR」の場ではなく、ありのままの自分を見せる「自己紹介」の場だと思った。自分を大きく見せないことが大切だと実感した。


就職活動は、決して一人で乗り越えられたわけではなかった。多くの人に何度も助けてもらった。ESを書くたびに、高田先生や大学のキャリアアドバイザー、大学の友人など、できる限り多くの人に読んでもらい、それぞれの視点からアドバイスをもらった。NHKのESは、FAXで福島の両親にも送り、意見をもらった。
就職活動全般を通して最も学んだことは、「人脈」を築く大切さ。人との小さな出会い・つながりが、自分を成長させてくれるきっかけにつながることを実感した。例えば、福島にいる中学時代の友人の母親から、読売新聞の記者やNHKのアナウンサーを紹介してもらった。高田塾では、ES提出に追われて忙しい時期に「30分でもいいから顔を出してみないか」と先生に誘われ、ニッポン放送の岩下アナウンサー(現・フジテレビ)とお会いすることができた。その晩は帰宅してから徹夜でESを書くことになったが、会うことによっていろいろなアドバイスを聞くことができた。「付き合いを大切に」という高田先生の言葉の意味を、就職活動が進むにつれて理解できた。また、そのような人脈作りに欠かせない、挨拶や礼儀、「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)といった社会人としての基本も、高田先生から教わった。高田塾では、作文技術を学べたことはもちろんだが、それよりも「社会人になるための基礎」を身につけられたことが一番の収穫だった。