朝日新聞社・NHK同時内定 K.N

「本日は、丸一日、僕らにつきあってくださり、ありがとうございました!!お疲れ様でした!!」
朝日新聞(秋採用)の2次試験が終わった瞬間だった。朝日の2次試験は丸一日だ。午前はグループディスカッション、昼食も記者である試験官3人と食べ、模擬取材、そして個人面接と続く。個人面接は僕が最後だった。彼らに、受験者全員の感謝の気持ちを込めて「お疲れ様でした!!」と声を張り上げた。
「すばらしいですねぇ」ブースを出るときに、そう聞こえた気がした。確かに自信はあった。グループディスカッション、昼食時の雑談、模擬取材。グループで一番とは思わない。
 その年の春、朝日新聞だけを受けた。エントリーシートには「朝日以外新聞と認めない」。そんな言葉まで書いていた。自信のあった2次試験で、ばっさりと落とされた。高田塾には顔を出したが、行けば行くほど、記者という職業への自分の適性を疑った。


6月末から大手の一般企業を複数、受けた。ここで2つのことを知る。ひとつは、自分よりはるかに優秀な人がたくさんいて、一般企業といえども受かることができないということ。もうひとつが、一般企業では第一志望だったXX社の面接で自分の学生生活や家庭環境(苦学)を振り返ることができたことだ。この2つのことは、「謙虚さ」と「辛かった人生を見つめなおす(苦学)」、という自分にかけていたものを僕に教えた。それを補強したのは、間違いなく高田塾だった。


その頃から高田先生のアドバイスが僕に少しは届くようになってきたのだと思う。合宿ではフジテレビの岩下さんが、確信を持って僕を評価してくれた。それでも、性格というのはそう簡単には変わらない。
僕は、高田塾に通い続けた。うまく説明できないが、直感的に高田先生を信頼しているのだ。朝日新聞のエントリーシートは、提出の3日前、NHKで書いたものを転用しFAXで送り、夕方、塾で先生の講評を聞いた。
「お前は記者に向いていると思うのか」「秋はもうダメだ。また春がんばろう」徹底して30分批判された。その日は塾にも参加せずに、帰った。やる気がなくなった。夜になって、本当はあきらめるつもりはなかったが「自分が記者への適性がないことがよくわかりました」と記者をあきらめるかのようなメールを高田先生に送った。「いや適性あります。体験が消化しきれていないだけです」。相変わらず返信が早い。ドキドキ待つ時間を僕に与えなかった。


エントリーシート提出期限は残り2日。やる気がでない。見えない場所に置いた。翌日。まだやる気はない。夜9時ぐらいだろうか。そろそろ始めないと本当にやばい。全面的に書き直し始めた。とまらず一気に書いた。気づいたら朝になっていた。9時ごろ着替えることもなく、家を出て、新橋の郵便局に持っていった。
夕方、塾へ行った。提出した朝日のエントリーシートのコピーを渡す。何を言われるのだろう。気が気でない。
「きみはやっぱすごいわ!」塾のなかに高田先生の声が響く。そんなにうならなくても・・・。恥ずかしいじゃないか。この言葉は最終面接まで僕の自信になってこだました。


もうひとつ、最終面接まで何度も思い出した言葉がある。「君は2次3次までは行くが、最終で落ちる」。何の根拠で言っているのだろう。あの確信を持った目で、先生は言い切る。普通に傷つく。それを言われたのは7月頃。この人のせいで僕は記者になることをあきらめるのではないかとさえ思った。
だが、この言葉が2次3次と進んでいくと重みを持った。どんなに面接が進んでも、誰に褒められても、僕がおごることを最後まで許さなかったのが、高田先生の言葉だった。


最終面接が近くとなると高田先生に必ず連絡をとった。第一志望の朝日の最終面接の前は、NHKの最終面接と重なり、時間が限られていたが、会いに行った。会いたいと思った。会ってくれた。
僕は思う。高田塾がなければ内定できなかった。なんて、思わない。僕に限って思ったとして言うはずがない。マスコミ塾に通わず内定する人間は山のようにいる。


だが、高田塾があったからこそ、より良い内定ができたと思う。人間として、記者として生きていくうえで、大切なことを学んだと思う。それが何かと言われれば、「人間力」というやつなんだろう。その意味がなんとなくでも分かるようになった頃、これを読んでいる君は内定できると思う。そして内定後は、いまの僕のように、よい記者になるめたに「人間力」を高めて行こうと思えるはずだ。なぜなら、この就職活動で出会った素晴らしいY新聞の国際記者が言うように、「記者の仕事、最後は人間性」なのだ。人々は、新聞の名前ではなく、その記者の人間性を信頼し何かを語ってくれる。人間性があるから、埋もれている事実に気づくことができる。その人間性を力と見た言葉が、高田先生の言う「人間力」なのだと思う。


さあ、これからだ。人間と向きあおう。僕も、きみも人間力を磨いていこう。