関西テレビ内定 T.S

「私、大阪に来たのが今日で4回目です。新しい場所を知りたいと思い、ここに来るまで41人の関西人とお話をしてきました。」
関西テレビの最終面接で、出馬社長(現、会長)ら役員6名にそう話した。
「それで、関西人はどうですか?」と社長。
「どうやってそんなにたくさんの人と話すことができたのですか?」と専務。
「時間はどれくらいかかりましたか?」と取締役。
この話題にもってこれれば、あとの答えは簡単だった。つい2日前からの印象的な出来事を話せば良いだけだ。酒好きを説明し、安い居酒屋をハシゴして情報収集に尽くしていたと言った。とりわけ、
「東京が人間でいう頭脳だとすれば、大阪はあらゆる意味で心です。」
というのがウケた。次に必ず聞かれた。
「どういうことですか?」
ここでまた、珍道中の話をする。今度はできるだけ面白いエピソードを選んだ。冗談好きの専務には
「心があっても頭は空っぽですなぁ。」
と言ってもらい、会場がドッと笑った。


 言うまでもなく、住んだことも行ったこともない場所で最終面接に望むことはリスクが高かった。「41人に話しかけた」という戦略は、高田塾の先輩が北海道新聞でやったという話を聞きつけ実行しただけだった。高田塾では、さまざまなアイデアを学び、盗むことができる。私の場合は最終だけでなく、二次面接、三次面接でも行った。それぞれ21人、39人と徐々に人数を増やしていった。人事の方が毎回増える情報を面白がってくれた。
 私にとっての就職活動は、どこまでやったら失敗するかを実験する場だった。どこまで自分を出したら失敗するかという考えに近いかもしれない。決してウソはつかなかった。


 相手を尊重し、楽しませながら素のままで話し合った。そして、普段から「就活モードに入らない」ことを何よりも意識した。就活中でも興味をもったことは結果を考えずにどんどんやってみた。普段はなかなか話せない人と接するチャンスが会ったら、いつでも飛び込んだ。翌日に面接があっても好奇心を損なうことは決してしなかった。


 それを教えてくれたのが高田塾であり、高田先生だった。就活は「受験」ではなく、自分を高め、認めさせていく道程だと思う。